洋上風力を「次の半導体に」 急速に開発進む台湾 現地を緊急取材【サタデーステーション】


エネルギー自給率わずか2.7%の台湾。その台湾でいま急速に洋上風力を拡大させる巨大プロジェクトが進められています。その最前線を取材しました。(3月2日OA「サタデーステーション」より) ■“開発拠点”日本メディア初取材 「台湾の洋上風力の開発の拠点、心臓部にあたる台中港にやってきました。ここでセキュリティーチェックを受けます」(報告・山口豊アナウンサー) 港の中に入ると、目の前に現れたのは… 「かなり大きいですね。1個1個多分これ長さ20メートルぐらいあるんじゃないでしょうか。高さも5メートルぐらいあると思います。だいぶ大きい穴ですね。ここに風車の羽の部分がつくということです」(報告・山口豊アナウンサー) この巨大な物体は、ナセルといって、発電を担う洋上風車の心臓部です。この大きな穴に3枚のブレード、羽が入ります。これ1台で8000キロワット、およそ8000世帯の電力をまかなえる計算になります。さらに… 「ここに見えているのが洋上風力のタワーです。1つが大体30メートルあります。これを3本。あちらもあちらもくっつけて大体90メートルになります。巨大なタワーの上に、一番奥に見えている心臓部のナセルを乗っけるということになります」(報告・山口豊アナウンサー) 工場では、拡張工事が行われていました。実は、この会社はスペインの企業で、台湾当局は、外国の企業を積極的に呼び込む政策をとってきたのです。当局は10年ほど前、洋上風力開発に関して三段階にわけた戦略を打ち出しました。当時、台湾は自分たちで風車を作ることが出来なかったため、まず外国企業の誘致を進め、作り方など、技術の習得に努めました。 台湾・経済部 李氏 「台湾の政府は洋上風力発電に関してかなり明確な政策をとっているため、海外の企業は安心して台湾に投資ができるのです。予測では来年までに、台湾の洋上風力への投資額はおよそ5兆円を超えます。その80%は海外の企業からの投資です」 そして今、台湾の企業は、自分たちで風車の一部をつくれるようになりました。最終的には、風車を輸出するということですが、台湾製の風車とは、どのようなものなのでしょうか。 ■「自然災害に強い」台湾が目指す風車 「目の前を見てください。巨大な構造物が見えてきました。上が黄色く塗られてます。あれが洋上風車の基礎の部分です」(報告・山口豊アナウンサー) この台湾企業では、東アジア特有の台風や地震に強い風車を独自に作り始めていました。洋上風車を海の中で支える、全長77メートルのジャケット基礎と呼ばれる部分。この上に、高さ200メートルの風車が乗ります。これだけで280メートルほどの高さになります。さらに、岩盤にピンパイルと呼ばれる70メートルほどの基礎を打ち込むので、全て入れるとおよそ350メートル。東京タワーより高くなります。このような風車を、台湾はすでに283基も洋上で稼働させています。台湾の風車は、台風などに耐えられるよう、特に基礎の強度を高めているといいます。台湾の洋上風力発電の開発には、日本の企業も参加していました。 JERAエナジー台湾 田村晃一CEO 「何度か台風を迎えることになりましたが、特に大きな問題というのは発生しておりません。この経験をまた日本に持ち帰って洋上風力は今後発展していくと思いますので、そういう中で役に立てていければ」 ■“次の半導体に“ 建設ラッシュ早くも 実は、洋上風力は、気候変動対策だけではなく、半導体の次の産業になることが期待されています。台湾の、半導体の世界シェアは6割を超えます。洋上風力でもそれを狙っています。 台湾・経済部 李氏 「洋上風力をさらに発展させるためアジアの市場、もちろん日本や韓国にも進出したいと考えています」 洋上風力産業が、大きく動き始めています。 台湾・経済部 李氏 「いま台湾の企業が作れるのは、水面下の基礎の部分です。来年までに2万人の雇用が生まれますが、溶接に関する仕事が大きな割合を占めます」 現場では… センチュリーウィンド林明弘さん 「(巨大なジャケット基礎を)溶接する技術を取得するには、訓練と時間が必要です。早くても1年はかかります。会社の社長は地元の人材が足りないと学校をつくりました」 この会社では何と、長期化するであろう人材不足を補うため、学校をつくりました。来年から100人ほどの卒業生が工場で働き始めるといいます。さらに…、この施設は、風車をメンテナンスできる人材を育てるため、台湾の企業が協力して作りました。この日は、100メートルの高さでの作業を想定した訓練が行われていました。ほとんどの人は、他の業種から転職してきた人たちです。 そして、工場の近くでは建設ラッシュが。 台中港 魏港務長 「新たなマンションやビルがたくさん建てられています。全て洋上風力発電で働く方に提供する建物です。今年中におよそ3000戸が完成する予定です。台中市発展にとって、とても大きなチャンスです」。 気候変動対策と経済成長の両立を目指す台湾。蔡英文総統のブレーンの一人は。 中央研究院 廖院長 「『温室効果ガス排出実質ゼロ』はとても難しい問題です。でも私たちはやるしかありません。それを目指す中で、新しい産業を生み出していくことも大切な目標です」 ◇ 高島彩キャスター 「台湾では洋上風力発電の普及が急速に進んでいるようですけれども、では日本ではどのくらい進んでいるんでしょうか?」 山口豊アナウンサー 「こちらで台湾と日本の洋上風力、稼働したもので比較しています。台湾が基数で言うと283、日本は53なので、5分の1以下ですよね。それからどのくらい発電できるか、設備容量で比較すると、台湾は原発2基分以上ですね。それに対して日本はその8分の1ほどと、かなり出遅れているということが言えると思います」 高島彩キャスター 「柳澤さんこうやってみて比べますと、やはり日本遅れているなというところがありますね」 ジャーナリスト 柳澤秀夫氏 「日本が後れを取っている最大の原因理由は何なんでしょうね」 山口豊アナウンサー 「これ興味深いデータがありまして、まず法整備なんですよね。台湾は東日本大震災のあと2012年から着々と戦略的に法整備を進めて洋上風力を拡大してきました。一方、日本はこれ一般海域というんですが、本格的な洋上風力を導入できるような法律を作ったのが2019年、つまり7年の差が開いてしまった。なぜこの7年の差が出来てしまったかということなんですが、やっぱり政治がこの洋上風力、新しいエネルギー、新しい産業ですよね、そこに向き合ってこなかったことあると思うんです。この新しいものっていうのは、やっぱりそこに挑戦する時に完全なものはありません。どこか弱点がありますよね。私たちはそれを見つけて、できない理由を見つけて立ち止まったんじゃないかと思うんです。例えば地震、それから台風。でも台湾はそこに官民をあげて挑戦して技術力で乗り越えてきた。今その差が出来てしまっているということが言えると思うんですね」 ジャーナリスト 柳澤秀夫氏 「既存の権益になかなか風穴を開けるということも大変な事ですよね」 山口豊アナウンサー 「それも1つ大きな理由だと思います」 高島彩キャスター 「実際問題、日本が洋上の風力発電にもっと入っていくという、そういう見通しはあるんでしょうか?」 山口豊アナウンサー 「今からでも実は巻き返しは十分可能です。きょう一番それをお伝えしたくてこの場にまいりました。というのは日本は海洋国家ですよね。排他的経済水域を含めると日本は全発電電力量のおよそ1.5倍、洋上風力だけで電力を作れるというぐらい海が広いんですね。特にこれからは浮体式洋上風力、海に浮かぶ洋上風力がこれからどんどん導入されてくる可能性があります。そうすると日本はアジアの中で洋上風力の市場が最大なんですね。アジア最大の洋上風力市場は日本なんです。この手元足元にある資源をうまくいかすためにも、産業を国内で育てる、それが大事だと思うんですね」 高島彩キャスター 「ただこういったことって、コスト面、最初の初期投資ですとか、いろいろお金がかかるなという印象があるんですけど、それは回収できるんですか?」 山口豊アナウンサー 「計算しているってことですよね。実はそこも合理的な理由があるんです。台湾のTSMCは、再生可能エネルギーだけで事業活動を行うことを約束しました。なぜそれを目標にしたかというと、GAFAとか、このサプライチェーンに入るにはそうしないともう生き残れないからです。これは日本でも同じ事が言えまして、日本企業の間でもいま再エネが足りないということが問題になっています。台湾も実は洋上風力以外に太陽光も大いに活用していまして、例えばこの池の上にも大量の太陽光パネルを並べたり、それでも足りませんから以前この番組でもご紹介しました、壁に貼れるペロブスカイト太陽電池、これを開発して、なんと今年中に台湾で販売を開始しようとしているんです。それからこれ以外にも日本と同じように地熱の開発も始めていて、台湾は全体で再エネで2050年に60から70%まで上げようとしています。来年度は、これを成長のチャンスだと、産業だと捉えてそこに挑戦すること、その姿勢を私たち日本も学ぶべき点が多いと思います」 [テレ朝news] https://news.tv-asahi.co.jp


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